Gファンドの特性と足元の市況につきまして
平素よりおまかせ資産運用サービス〈SUSTEN〉をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。SUSTENのご利用者の皆様に、代表取締役の岡野より足元の投資環境と当社ファンドの運用状況についてご説明いたします。
年初来よりお伝えしております通り、債券市場では過去誰も経験したことのないような金利上昇(債券価格下落)が発生しそれが継続しております。2021年9月以降、債券の投資家にとっては非常に厳しい運用環境が続いており、SUSTENをご利用いただいている投資家の皆様にも、引き続き大変ご心配やご迷惑をおかけしており心苦しい限りです。一方で、2月や7月にお送りしたレターの中では「長期的には過度な懸念は不要、短期的にはしばらく不得意な局面続く」とお伝えしたところではありますが、足元ではやや薄明りも見え始めており、夜明けの近さも感じています。まだしばらく市場は不安定に推移することが予想されますが、短期の動向に一喜一憂せず、目線を長期に持って投資を継続することが望ましいと考えています。
このレターでは、SUSTENご利用者の中でもっともご関心の高い、Greenファンドに関してその特性と足元の運用状況について改めてご説明しています。これまで単独では開示してきませんでした(※1)Gファンド単独のバックテスト・パフォーマンスのグラフもございますので、ご参考にしていただければ幸いです。
※1 過去のシミュレーションに基づいて投資方針を決定していただきたくはなかったため、これまでGファンド単独のパフォーマンス開示は控えておりました(RファンドやBファンドとの混合パフォーマンスはご紹介してきております)が、40年に一度の相場を経験している現状においてはGファンド単体の平時のシミュレーションをご紹介することも長期投資の継続には重要と考え、今回初めてご紹介するところです。
Greenファンドの設計と方針
おまかせ資産運用サービス〈SUSTEN〉において、 Greenファンド(以下Gファンド)は次の役割を果たすよう設計されています。
- 経済成長に依存しにくい収益源となること(株式に対して長期的に低相関であること)
- 制約のない投資家にとって株式と50:50で保有した際に、投資効率が最大となること(投資タイプでいうところのヘッジファンド・タイプに相当)
SUSTENにおけるGファンドは、Redファンド(以下Rファンド)と並び、収益追求を担うファンド です。Rファンドの収益の源泉が世界の経済成長であるのに対して、Gファンドではそれ以外の、経済成長に依存しにくい収益源に投資します。Rファンドと合わせて保有した際にポートフォリオの投資効率が高まるよう設計 されており、制約のない投資家(※2)にとってはRファンドとGファンドを50:50で保有することが理想的になる計算です。少し専門的な話になってしまいますが、GファンドのRファンドとの相関は、短期的には0.5以上の高い相関を持ったり、あるいはマイナスの相関を持ったりすることも許容しつつも、長期的には0.2-0.3となるように設計されています。
※2 投資家によってはもっとリスクを抑えたいという希望や、株式に対してより強気の見通しを持っている、あるいはSUSTEN以外のサービスで株式に投資している場合があります。その際には「ポートフォリオ診断」によって、よりBファンドの比率を高めたり、Rファンドの比率を高めたり、またはGファンド中心のポートフォリオとすることを提案する仕組みです。
これらの設計条件を満たすために、Gファンドは次の方針に基づいて日々運用が行われています。
- オルタナティブ・リスク・プレミアム(ARP)に投資する
- 人間の判断に拠らず、統計やデータに基づいてシステマティックに投資判断を行う
- 組み入れ戦略に対して継続的に改良を加える
- 最新の知見を反映する新規戦略を積極的に取り入れる
ARPという言葉は、耳慣れない方も多いと思いますが、これは株式投資の収益の源泉である株式リスク・プレミアム(ERP)や市場リスク・プレミアム(MRP)とは別のリスク・プレミアムを意味します。ARPはこれまで個人投資家ではなかなか投資することが難しかった収益源で、簡単に言えば金融市場に存在する非効率な特性に着目してリターンを狙うものであり、株式、債券、通貨あるいはコモディティ等への売買を組み合わることで投資を実現しています。
月次のパフォーマンス・アップデートや、不定期のレターにてご紹介しています通り、Gファンドに組み入れられているARPは大分類で6種類あり、バリュー戦略、モメンタム戦略、キャリー戦略、スキュー戦略、ディフェンシブ戦略及びフロー戦略となっています。そしてSUSTENではこれらの戦略に対して日々研究開発をしつつ、新規の運用戦略についても積極的に取り入れています。
Gファンドでは以下の資産クラスを投資対象として戦略を構築しています。私の知る限り、これほど広範な資産クラスを投資対象を持つ投資商品は国内では極めて稀であり、そしてこれらの資産クラスを買い持ちをすることもあれば売り持ちをすることもある 点も特殊です。専門的にはこのような投資手法はロング・ショートと呼ばれ、資産クラス間の特定の統計指標に基づいた相対価値に着目してポジションを構築 します。プロと呼ばれる人たちでも誤解していることがありますが、このロング・ショートは相場の方向性を見てポジションをロング(買い持ち)に大きく傾けたり、ショート(売り持ち)に傾けたりするものではありません。基本的には相場全体の方向性とは別の要素に投資する、例えば地域間の強弱や資産クラス間の強弱などに投資する 投資手法となっています。例えば「バリュー戦略」であれば、特定の指標に基づき割高な資産クラスを売り持ちし、割安な資産クラスを買い持ちするといった具合です。必ずしもここに、相場全体が上向いているのか下向いているのかといった判断が入ってくるわけではありません。
さて、広範な資産クラスを投資対象とするGファンドですが、〈経済成長や株式市場に依存しにくい〉という設計を満たすため、ロング・ショート戦略ではありながら恒常的に買い持ち投資しがちな資産クラスがあります。それが、短期債です。短期債は、他の資産クラスと比較して、次のような特徴を持ちます。
- 長期的に株式とは低相関の関係にある(株式市場に連動しにくい)
- 長期的に他の資産クラスと比較して投資効率が高い(リスクあたりのリターンが高い)。
- 短期的に値下がりしても、価格が回復する確率が他の資産クラスと比較して高い。
この特徴をご紹介するために、次のページでは、株式・短期債・長期債・金・コモディティの比較を行います。
資産クラスの比較(株式、短期債、長期債、金、コモディティ)
今回はあえて各資産ごとの特徴を詳細にご紹介することは避け、過去のリターンの推移の比較だけをご覧に入れることにします。以下のグラフは、各資産クラスを同じリスク水準の下で投資をした場合、過去のリターンとドローダウン(用語につきましては詳しくはこちらのレターをご覧ください。)がどのように推移したかを示しています。
個人向けの情報サイトなどでは、「株式と債券では長期的に株式の方がリターンが高い」とする言説をときどき見かけることがありますが、ご覧の通り同じリスク水準の下で公平に評価すれば長期的な運用効率は過去30年においては短期債>長期債>株式>金>コモディティであることがわかります。さらにドローダウンを見れば、株式と債券が同時に大きく不調になるケースは少なく、特に短期債に関しては不調期が株式と重なりにくく、長期の投資効率が高いという、Gファンドにとって理想的な特性を兼ね備えていることもわかります。このため、Gファンドは常に短期債を買い持ちしているわけではないものの、長期的に短期債を選好しやすい性質を持っているのです。
Greenファンドと短期債のパフォーマンス比較
Gファンドのベースに短期債投資が存在するということを前提に、ファンドのパフォーマンスをご説明すると少し足元の相場環境の整理がしやすくなります。というのも、年初来からお伝えしている通り、足元では40年に1度、いえ恐らく史上初めての水準で債券投資のリターンが悪化しており、残念ながら特に短期債においてそのマイナスが顕著に表れています。
Gファンドはこの影響を大きく受けてしまい、皆様のご期待にお応えできずご心配をおかけしているところです。一方で実はGファンド内では、ベースとなる短期債投資の部分で大きなマイナスを起こしてしまっているのですが、それ以外のポジションはむしろプラスに推移しており堅調であることがわかります。
短期債の今後の見通し
ご紹介してきました通りGファンドはその設計上、短期債を買い持ちしやすい性質を持っているため、 Gファンドの今後を見通す際にポイントとなるのが、短期債投資のリターンが今後どのように推移 するかという点です。その意味で、過去2回のレターにおきましては「長期的には過度な懸念は不要、短期的にはしばらく不得意な局面続く」とお伝えしたところではありますが、足元ではようやくやや薄明りも見え始めています。
明るい兆しのひとつは、短期金利の急上昇(債券価格の急下落)を引き起こしている原因である
インフレ率の見通しに落ち着きが見られ始めていることです。ニュースや新聞ではまだまだ米国のインフレが加速するような解説がなされているところではありますが、市場に参加する投資家の将来のインフレ見通し(期待インフレ率※)は落ち着き始めており、実績インフレ率についてもピークが近いことを感じさせます。利上げを実施している米連邦準備制度理事会(FRB)は、継続的に実績インフレ率が低下するのを確認するまで利上げの手綱は緩めないとしていますが、その将来も遠くないと考えられます。
もうひとつの明るい兆しは、すでに短期金利が高い水準にまで上昇しているという点です。債券投資は〈金利が上昇すると、価格が下落する〉性質がありますが、同時に〈金利収入に相当する部分が プラスになる〉という重要な性質も合わせ持ちます。2021年の8月時点では、0.2%しかなかった金利水準が、2022年9月28日時点で4.3%まで上昇しています。
今後さらなる金利上昇があろうとも、この金利収入に相当する部分による余力が分厚くなっていると言えますし、これまでの歴史を見ても、短期債の名目金利が4%程度まで上昇してくると、その後の リターン実績は非常に魅力的なものになっています。
過去に米国短期債金利が4%台にあった時点以降の金利の動き方は様々でしたが、米国短期債を保有した場合のリターンを金利の動き方のパターン別にシミュレーションした結果は以下の通りです(2ページ前の分析と同様、Gファンドと同じリスク水準での保有を前提に試算)。
おわりに
このレポートでは、Gファンドの設計やその性質、短期債に関する現在及び将来の見通しについてご説明しました。足元では過去に類を見ない相場を経験している中で、サービス開始来、いまだ投資家の皆様のご期待にお応えできておらず、大変心苦しく思います。SUSTENは完全成果報酬型のサービスです。私たちの最大の痛みはお客様に損失を与えてしまうことであり、少しでも早く回復できるよう、これからも改善を続けて参ります。投資家の皆様におかれましては引き続き長期投資にお付き合いいただければ幸いです。
執筆者 岡野 大 代表取締役 最高経営責任者
追記
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