ファンドの運用状況と足元の市況につきまして
平素よりおまかせ資産運用サービス〈SUSTEN〉をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。SUSTENのご利用者の皆様に、代表取締役の岡野より足元の投資環境と当社ファンドの運用状況についてご説明させていただきます。今年2月のサービス1周年のご挨拶にて書かせていただいた内容の更新となりますが、昨年の9月以降、引き続き資本市場では過去に類を見ないレベルの大変な相場を経験していますので、是非ご一読いただければ幸いです。
特に債券市場では過去30年間、誰も経験したことのないような価格下落が発生しており、一般的に「安定型」や「低リスク型」と分類されるような債券中心のポートフォリオに大きな損失が出ています。株式市場においても債券市場ほどではないものの、ゆるやかに下落基調となっており、「積極型」や「高リスク型」と分類されるような株式中心のポートフォリオは耐えつつも下落しているという状況です。
またこの半年の相場における興味深い点は、通貨としての日本円の弱さと米ドルの強さとが際立っている点で、後者では円以外にもユーロなど他の主だった先進国通貨も軒並み米ドルに対して下落をしています。このためグローバル投資の文脈から言っても、資本市場の相場が下落しているにもかかわらず為替リスクをヘッジしない(相対的にリスクが大きい)運用の方が、為替リスクを軽減した(相対的にリスクが小さい)運用よりも短期的なパフォーマンスにおいて上回るという逆転現象も観察されています。
SUSTENでは、長期視点に基づいてリスクを分散したポートフォリオを構築するために、株式に依存しにくく、また特定の通貨のリスクに依存しにくいよう設計を行っているところではありますが、皮肉にも昨年からもっともやられなかった投資のひとつは〈為替リスクを軽減しない株式集中投資〉となっており、現時点のSUSTENのパフォーマンスはそれと比較するとやや残念な形となっています。
とはいえ足元のような、世界的に債券の価格が下落(=金利が上昇)し続け、特定の通貨が一方向に向かって伸展し続けるような相場がいつまでも続くわけではありません。特に債券投資については株式投資とは異なり、発行体がデフォルト(破綻)しない限り必ずその価値は戻ってきますので、時間はかかるかもしれませんがそれほど悲観的になる必要はないというのが現在の状況です。
SUSTENをご利用いただいている投資家の皆様には、引き続き大変ご心配やご迷惑をおかけしており心苦しい限りではございますが、この臨時レポートでは昨年からの市場環境がどれほど特殊であるかを視覚的にご案内しつつ、それでも足元の状況を過度に憂う必要がなく長期投資を続けることの合理性についてご紹介します。
まとめ
- グローバル債券市場は、過去30年で最悪のドローダウン(値下がり)を経験中。
- Gファンドの不調の大部分は、この世界的な国債価格の下落によるもの。
- グローバル債券市場は〈3σ(シグマ)〉のイベントとなっているが、投資適格な債券の下落については過度な心配は不要。
- 長期投資の前提を変えずに投資を継続することが重要。
過去に類を見ないドローダウンの発生
まずはドローダウン・チャートと呼ばれるグラフを用いて、足元の市場価格の下落インパクトをご紹介します。ドローダウン・チャートはあまり一般的ではないかもしれませんので、グラフの見方からご説明させてください。このグラフは横軸に時間を取り、縦軸に運用パフォーマンスの下落幅を取ったものです。時点ごとの過去最高評価を100としたときの下落幅(これをドローダウンと言います。)がどの程度かを視覚化したもので、パフォーマンスが過去最高評価から下落をすると、それに応じて天井を掘るようにチャートが描かれます。別の言い方をすれば、グラフ上で100未満の数値はその時点で最大の損失を抱えている投資家の投資評価を意味し、数値が100に戻っていれば(その時点での過去最高評価を回復・更新しているため)どの投資家も損をしていない状態を意味します。おまかせ資産運用サービス〈SUSTEN〉において、 Greenファンド(以下Gファンド)は次の役割を果たすよう設計されています。
たとえば先進国の株式市場の、過去30年におけるドローダウン・チャートはこちらです。
過去、大小さまざまなドローダウンを経験してきた株式市場ですが、特に2000年から2003年にかけては40%以上の下落を起こし(ITバブル崩壊)、また2007年から2009年にかけては50%以上の下落をしていることがわかります(リーマンショック)。このグラフは過去30年間のグラフとなっていますが、これよりもさらに遡れば1987年のブラックマンデーであったり、もっと古いところでは1920年代の世界恐慌であったりにも同様の大幅な下落が見られます。株式に投資をしていると、このように2-3年のうちに資産価値の半分がなくなってしまうような下落を経験することがありますが、それを加味しても長期的には企業の経済活動、ひいては世界経済の成長に支えられ資産価値が上昇していくことが期待できるため、市場ショック発生時に悲観的になり投資をやめてしまうことは最も避けるべきことのひとつとして知られるところです。
2022年に入ってからは、世界の株式市場は20%程度下落しています。メディアでは株価下落がセンセーショナルに報じられてはいますが、この下落は過去の歴史的な市場ショックと比較すると相対的にはまだしばしば経験する下落に留まっており、市場がパニックになっている様子は見当たりません。株価下落のメカニズムとしては2000年代初頭のITバブル崩壊時に似ているところもあるため、今後さらに下落が進み、歴史的な下落幅を記録する可能性も十分あり得ますが、確定的な未来があるわけではなく、また仮に下落したとしても長期的にはそれを上回るリターンも期待できるため、SUSTENでは短期の価格動向に基づいて売買をすることなく投資を継続することが望ましいと考えています。
続いて、次ページに掲載するのはグローバル債券市場の過去30年のドローダウン・チャートです。株式市場のドローダウンをご存じの方でも、意外と債券市場のドローダウン・チャートをご覧になったことのある方は少ないのではないでしょうか。というのも株式投資とは異なり、債券投資は債券の発行体が破綻しない限り(かつマイナスの利回りで投資をしない限り)必ず投資元本が戻ってくる投資になりますので、一時的に価格が下落したとしても発行体の返済能力に心配がなければ、短期的な価格変動に興味を持つ投資家は少ないためです。ただし今回ばかりはその価格下落の深さが特別で、市場がこれまで経験したことのないドローダウンを引き起こしており、歴史的なグラフ形状になっていますのでご紹介します。
通常、債券投資はどのタイミングで投資をしたとしても将来投資元本に利子が上乗せされて返ってくる投資(※)であるため、一般的には債券投資は「安定型」や「低リスク型」と分類されるものの、価格変動がないわけではありません。ドローダウン・チャートを見ても、過去において2-3%程度の短期的な下落は幾度となく経験しており、その都度すぐに回復しているのも見て取れます。直近の下落以前の過去30年間の中でもっともドローダウンが大きかったのは、1993年から1995年にかけての下落であり、このときはピークから5%以上下落をしました。しかしながら、直近の2021年から始まったドローダウンではその深さが10%を超えており、過去30年で最悪の下落のさらに倍の深さの下落を起こしています。過去30年における最悪値を2倍更新することは、債券市場の現状が極めて異例な状態であることを物語っており、単純比較はできないものの例えば株式市場で同様なインパクトを持つ下落が発生するとリーマンショック並みかそれ以上のイベントであると言えます。
※ 前述の通り、発行体(国債であれば国)がデフォルト(破綻)を起こす場合、またはマイナスの利回りで投資を始める場合を除く。
今回のこの債券市場の荒れ模様は、コロナショック以降の世界で起こっている状況、すなわちいったんマイナス成長に陥った経済を支えるために各国の中央銀行が大幅に政策金利を引下げ長短金利が歴史的な低水準に達した後、経済の回復と共に急激なインフレ(物価上昇)が発生し、各国の中央銀行が今度は物価上昇を抑えるため2年前とは逆方向の利上げを強いられているためと考えられます。一般的によく説明されるのは、理由はどうであれ中央銀行が利上げを実施すると、それまでの低金利時に取引されていた債券の魅力が相対的に低下するため、債券全体の価格が下落するというものです。
現在、例えば米国においては40年以上ぶりのという非常に強いインフレ水準を示しており、それを抑制すべく急激な利上げが実施され、債券価格の下落幅も強烈なものとなりました。このスピード感での金利上昇及び債券価格の下落は、機関投資家が主な取引主体である債券市場においても純粋にサプライズであり、私たちSUSTENとしても想定外の変動となりました。
どんな経験豊富な投資家でさえ、今回の債券市場の暴落は初めての経験となるものでしたが、私たちは債券投資自体に悲観をしているわけでは全くありません。中央銀行が急速に利上げを実施している最中は一時的に厳しいパフォーマンスにはなってしまうものの、いずれ利上げの限界が来る、または引上げられた金利による利子収益が価格下落の影響を打ち消す段階に入っていきます。くどいようですが、債券投資は発行体が破綻しない限り必ず投資元本が戻ってくる性質があるため、一時的な逆風は我慢して気長に保有し続ければ報われるものです。ご参考までに、この30年における債券投資の累積リターンの実績をご覧ください。
投資家の皆様の中には、〈市場では今後1年かけて利上げがされていくと言われている。利上げ期間中に価格が下落するならばその間は債券投資を止めて、利上げが終わった後に投資を再開すればいいのではないか。〉と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。たしかに市場参加者に先立ってそのような投資行動が取れれば最善であるものの、短期の価格動向(あるいは金利動向)を予測し取引することには大きな不確実性を伴い、統計的に言えばそのような短期売買はオッズの悪いギャンブルになってしまいます。また実際には市場は常に金利予測を間違え続けてきた歴史もあるため、現在市場で織り込まれている利上げスケジュールというのは、そもそも情報として信頼性が低いこともあり、結果的には長期保有することが将来後悔しづらい最適解であると考えます。
SUSTENの絶対収益追求型投資の状況
さて、ここまで株式市場と債券市場という、2つの代表的な資本市場の足元の動向についてご紹介しました。これらはそのまま、SUSTENでいうところのRファンド(株式投資)とBファンド(債券投資)と読み替えていただいて構いません。Rファンドは世界の株式市場に投資をするツールであり、Bファンドは同様に世界の債券市場に投資をするツールです。これらのファンドはタイミングを図ったりアクティブに資産を売買するものではなく、恒常的に資本市場に参加しようとします。
一方でSUSTENにはR/Bファンドに加えて、株式市場の成長に過度に依存することなく収益獲得を目指すGファンドがあります。Gファンドは、株式に投資することで得られる収益(株式リスク・プレミアム)以外のオルタナティブ・リスク・プレミアム(ARP)に恒常的に投資を行うツールです。このGファンドですが、残念ながら昨年の9月以降は苦しい展開が続いています。というのも、Gファンド内で投資している6つのARP戦略のうち、ディフェンシブ戦略と呼ばれる戦略で大幅なマイナスを生み出してしまっているためです。ディフェンシブ戦略以外の各ARP戦略は小幅にプラスであったりマイナスであったりと、このところの資本市場の混乱の影響は見当たりません。
特に2022年のマイナス寄与が目立つディフェンシブ戦略ですが、当戦略がどのようなものか簡単に言ってしまえば〈相対的にリスクの小さい資産を買い、相対的にリスクの大きい資産を売る〉ことで得られるリスク・プレミアムに投資する戦略です。
よく投資の世界では、ハイリスク=ハイリターン、ローリスク=ローリターンと言われることが多いですが、現実に資本市場での各資産価格の振る舞いを観察すると、実は長期的にはハイリスクな資産の方が、投資効率が悪いという統計が浮かび上がってきます。直観的には、例えばP.3のグラフ(株式投資の累積リターン)とP.5のグラフ(債券投資の累積リターン)を比べてみると、株式投資の方が債券投資よりもアップダウン(変動リスク)が何倍も大きいのに対して、リターンの差はそれほどの差ではないことがお分かりになるでしょうか。また債券市場は現在、史上最悪レベルの下落をしてはいますが、それでも-10%程度と、株式市場の-50%を超えるような史上最悪レベルの下落と比べれば全然下落していないとも言えます。
ディフェンシブ戦略の尺度に基づき、同じ大きさのリスクの下で公平に資産を評価すれば、株式と債券であれば債券の方が魅力的であり、同じ株式であれば市場感応度の低い株式の方が魅力的であり、また同じ債券であれば年限の短い債券の方が魅力的であるというのがこの戦略の基本的な哲学となります。つまり、どのような投資環境であれ、ディフェンシブ戦略では常に(特に短い年限を持つ)債券に重点的に投資をすることになります。
このディフエンシブ戦略の投資行動は、市場に参加する投資家の多くが低いリスクの資産を多く買うよりも、高いリスクの資産を少なく買うことを好むこと(専門的な言い方をすれば、市場参加者の多くがレバレッジ回避的でありながら、要求リターンが高いということ)のまさに逆をいくことで収益を獲得しようとする戦略であり、私の大好きな戦略のひとつであるのですが、足元の債券市場の暴落は完全に逆風となってしまいました。P.2以降で株式市場と債券市場の混乱の差をご覧にいれましたが、相対的にリスクの大きい株式市場にはさほど大きな下落はないものの、相対的にリスクの小さい債券市場においては暴落が発生しており、それがダイレクトに当戦略にマイナス影響を与えています。
足元の資本市場の状況は、このようにディフェンシブ戦略にとって(それこそ3-40年に一度の)逆風の環境ではあるものの、とはいえこの戦略の魅力に影響を与えるものではありません。この戦略が将来に渡って恒常的に機能しなくなるときというのは、市場参加者による高リスク資産(例えば株式など)に対する過大評価がなくなるときです。今回の債券の暴落は、インフレ率の大幅な上昇に伴う中央銀行の急激な利上げが発端になっており、投資家の投資行動に変化があったわけではありません。むしろ、足元でこれほど債券価格が暴落しているにも関わらず株式の下落が緩やかであることを見ると、まだまだ株式への需要は分厚く、市場参加者のポートフォリオはますます高リスク性資産に偏っていると考えられ、ディフェンシブ戦略の将来の期待リターンは高まっているとすら感じています。また逆説的ではありますが、3-40年に一度の大暴落を経験しつつもこのディフェンシブ戦略のファンド全体へのマイナス寄与が13%でとどまっていることは、この投資戦略の設計および管理が適切になされていることを物語っているため、SUSTENのサービス開始時期と相場のかみ合わせの悪さに歯がゆさを感じつつも運用の技術的能力に心配はしていません。ディフェンシブ戦略自体は、どのような投資環境になれど債券を中心に継続的に投資し続ける戦略になりますので、この厳しい逆風を耐えつつ順風環境を待つという投資行動をとります。
今回はご参考までに、Gファンドに組み入れているディフェンシブ戦略以外のARP戦略の、単体バックテストも掲載します。なおSUSTENでは、日々これらの運用戦略の研究開発が進められており、2022年7月現在の最新の研究成果のバックテストを掲載しています。このため必ずしもGファンドの過去の実際のパフォーマンスとこれらバックテストが完全に整合的ではない点ご了承ください(たとえば2022年に入ってからファンドに追加された新戦略は、2021年のファンドの実リターンには取り込めていません)。今後も戦略の改良の改善を続けていくため、あくまで現時点でのバックテストであることにご注意ください。
それぞれの投資戦略が何に立脚しており、どのようなリスク・プレミアムに投資しているかについてはまた別の機会にご紹介しますが、それぞれの戦略に共通するのは株式市場に依存しにくい収益源であるという点にあります。戦略によって遡れる期間が異なるため、計算期間が異なりますが、ご着目いただきたいのはそれぞれのグラフの形状が、P.3の株式の累積リターンのグラフの形状と似ていないという部分になります。
投資家の方の中には、これらのバックテストをご覧になったときに、特定のARPに集中投資すればいいのではないだろうかと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれらのグラフはあくまでバックテストであり、将来のリターンを予測するものではありません。将来のパフォーマンスの予測に基づき過度にポートフォリオを偏らせることは、株式市場や債券市場の短期売買と同様に非常に大きな不確実性を伴うため、得策ではないというのがSUSTENの投資哲学です。長期的にリターンの期待できるものに常に広く分散投資することで、リターンの安定度を高めようというのが狙いです。
過去の資本市場の大暴落とその後
再び話題を債券市場の混乱に戻しましょう。市場の混乱ぶりを示すもう一つのグラフに、コーン・チャートというグラフがあります。コーン・チャートとは、ある時点で投資を開始したときに、将来どのくらいの確率でどういったリターンが得られるかをシミュレートするときに利用されます。投資の成果は必ず不確実なものであるため、確率分布を用いてその将来を評価します。SUSTENのご利用者の方は、サービス利用開始時のポートフォリオ診断にて、今後30年で資産がどのように推移すると期待できるかのグラフをご覧になったと思いますが、あのグラフがいわゆるコーン・チャートです。確率分布の裾が、円錐(cone)のように広がっていくようにグラフが描かれるため、その名の由来があります。
このコーン・チャートですが、一般的には10年や20年以上先の資産状況をシミュレーションをする際に使用されます。というのも、10年以上の長期投資を前提に立てば、資産価格の不確実性が資産に与えるインパクトは時間とともに軽減され、マイナスの結果が得られる確率が減っていき、長期投資の魅力が伝わりやすいグラフになるためです。
今回このレポートでは、一般的ないわゆる長期のコーン・チャートではなく、短期(想定期間2年程度)のチャートを描くとどのように見えるかをご紹介します。まずは、Bファンド(債券投資)のコーン・チャートはこちらになります。サービス開始日(2021年2月15日)を起点に取り、SUSTENの想定するリスク及び期待リターンに基づいて描画しています(それらの想定は、ポートフォリオ診断時に使用されるものと同等です)。
図中に少し見慣れない記号〈σ〉が出てきました。この記号はシグマと読み、分布の〈1標準偏差〉を意味します。詳しい意味についてはあまり気に留めていただく必要はないのですが、このσは、どのくらい起こりうる事象かを示すときに使われたりする記号です。たとえば製造業では大量生産時にどの程度不良品が入っているかを管理するときに使われており、「不良率を3σに抑える」といえば、それは不良品が混入する確率が1,000回に3回以下程度とすることを意味しています。σの数が大きくなればなるほど、より起こりにくいことを意味し、その確率は次のテーブルで知られています。
このコーン・チャートにおいては、σにプラスの符号がついていれば、良い方の起こりうる事象、σにマイナスの符号がついていれば、悪い方に起こりうる事象と読んでください。
今回の債券市場は、SUSTENのサービス開始時点をグラフの起点に取れば、実に-3σの線を超過するレベルで下落が発生しました。サイコロでいえば、3.7回連続で1の目が出るのと同じ確率で発生するイベントです。グラフをご覧になって分かるように、昨年9月までは想定線(中央値線)にいたところ、その後の急速な金利上昇に伴い大幅に下落を引き起こしました。
同様の分析をRファンド(株式投資)に行うと、こちらになります。
Rファンド(株式投資)は、2021年末ごろをピークに足元下落はしているものの、その下落幅は-1σにも到達しておらずよくあるアップダウンの水準にとどまっています。米ドルベースの株式市場自体は、P.2やP.3でご覧いただいたように2022年に入ってから-20%のマイナスを経験しているところではありますが、SUSTENのRファンド(株式投資)は為替変動を完全にヘッジしているわけではなく、一部海外通貨のリスクを残しているため(部分為替ヘッジといいます)、円安に助けられる形でマイナス幅が緩和されました。過去のリーマン・ショック(2008年)やコロナ・ショック(2020年)のときのように為替が円高になってしまっていた場合、より大きなマイナスを経験していても不思議ではありません。
続いて、次ページにGファンド(ARP投資)において同様の分析を行ったものを掲載します。
サービスイン直後は想定線におりましたが、組入れARP戦略のうちのディフェンシブ戦略が2021年9月以降の金利上昇に伴い大きくマイナスとなり、Bファンド(債券投資)の-3σとまではいかないものの、Gファンド(ARP投資)のパフォーマンスも-2σの線(サイコロに例えれば、1の目が2回連続出ている水準)まで下落してしまっています。
SUSTENの運用する3つのファンドの短期のコーン・チャートを見ると、特にBファンド(債券投資)とGファンド(ARP投資)に稀に見るようなマイナスが生じてしまっている状況ですが、ここで重要なのは、短期的に-2σ線や-3σ線に到達したからといって、将来に渡って-2σ線や-3σ線をたどるわけではないということです。反対に言えば、短期的に+2σや+3σのプラスのリターンが得られようとも、それが長期的に持続するものでもありません。
ご参考までに、リーマン・ショック後の全世界を対象にした株式投資のパフォーマンス推移をご覧ください(次ページ)。リーマン・ショック以前につけたピークの半年前に投資を始めたとして描いた長期(10年)のコーンチャートです。
このチャートに基づけばリーマン・ショックの際には株式市場は一時的に-4σに相当する下落をしており、その衝撃の大きさが見て取れます(計算の起点によっては-5σから-6σという人もいます)。-4σというと、サイコロを振って1の目が6回連続して出てしまうレベルの起こりにくさを持つイベントであり、通常はあり得ないとされますが、実際には数年に一度このようなことが起こっています。
(そもそもこの確率評価は、市場が高度に効率的であり、株価がランダム・ウォークするという机上の前提で計算をしているため、現実世界には則していない面がある点についてはご留意下さい。)
2008年のリーマンショック時には一時的に大混乱に陥った株式市場ですが、やがて落ち着きを取り戻し、2014年ごろにはほとんど長期想定線まで回復してきています。資本市場は常にこうしたサイクルを繰り返しつつ、長期的にリターンを生み出してきているのです。ここで避けなければならないのは、一時的に-2σや-3σの線を触ったからと言って、ただちに投資を止めてしまうことです。パフォーマンス下落の理由を把握して、問題がないようであれば継続的に投資を行っていくことで長期的には想定リターン付近まで回復してくるものと考えられます。
Bファンド(債券投資)とGファンド(ARP投資)に関して言えば、今回のパフォーマンス悪化のほとんどの原因は金利上昇によるものと分析することができ、いまのところ悲観する必要はありません。半年後や1年後の相場がどのようになっているかは依然として不透明な状況ですが、私たちは短期の相場に一喜一憂することなく、長期的にリターンが期待できるリスクに分散して投資し続けることが肝要だと考えています。
おわりに
このレポートでは、昨年からの市場環境の特殊性や、その要因、また長期投資を続けることの重要性についてご説明しました。足元では40年に1度の相場を経験しているとはいえ、サービス開始来、いまだ投資家の皆様のご期待にお応えできておらず、大変心苦しく思います。SUSTENは完全成果報酬型のサービスです。私たちの最大の痛みはお客様に損失を与えてしまうことであり、少しでも早く回復できるよう、これからも改善を続けて参ります。投資家の皆様におかれましては引き続き長期投資にお付き合いいただければ幸いです。
執筆者 岡野 大 代表取締役 最高経営責任者
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