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    不確実性に対する見返り(リスク・プレミアム)
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    不確実性に対する見返り(リスク・プレミアム)

    不確実性に対する見返り(リスク・プレミアム)

    この記事の内容

    • 不確実性に対する見返り(リスク・プレミアム)
    • くじ引きと効用関数
    • チケットの適正な価格
    • 効用のモデル化
    • リスク・プレミアムが存在するためには?

    こんにちは、sustenキャピタル・マネジメント代表取締役の山口です。前回の「うれしさを定義する(効用関数)」は、「効用関数」についてご説明しました。今回は、「リスク・プレミアム」についてご紹介したいと思います。

    くじ引きと効用関数

    今回は前回のゲームを少しアレンジして、実際の株式市場に近づけてみたいと思います。

    アタリがでれば賞金3万円、ハズレでも1万円もらえるくじ引きがあります。(アタリがでる確率は2分の1です。 ) そして、このくじを引く権利となるチケットが2万円で販売されています。

    さて、私たちはこのチケットを買うべきでしょうか?

    前回の効用関数の話を踏まえると、前回Bを選択した人、すなわちリスク回避的な人は「買わない」ことを選ばれたことでしょう。

    このくじ引きは2分の1の確率であたるので、賞金の期待値は2万円です。チケットの価格と同じ2万円なので一見すると公平に見えますが、リスク回避的な人々にとっては、くじがあたるかはずれるかの不確実性があるので効用(=うれしさ)はその分低下します。ですから2万円を払ってまで参加するほどの価値はないと判断されるからです。

    チケットの適正な価格

    それでは、このチケットがいくらであれば買いたいと思うでしょうか?いいかえればこのくじのフェアバリュー(安すぎず高すぎない適正な価格)とは一体いくらなのでしょうか。

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    この適正価格はいくらなのかという問題は非常に奥が深いものです。人それぞれで不確実性に対する耐性は異なりますし、お財布事情も関わってくるためなかなか一筋縄ではいきません。しかし、市場原理がしっかりと機能していれば、「市場に聞いてみる」のは有効な手段の一つとなりえます。

    例えば、このチケットがオークションで1枚売りに出されていることを想定してみたいと思います。

    オークションが5千円から始まったとします。このとき、買いたい人が殺到するはずです。当たれば3万円、はずれても1万円もらえるのでチケット代を差し引いても最低5千円はプラスになるので当然ですよね。したがって、買い手が多くなり、やがて入札価格は上昇していくことになります。

    まもなくして入札価格が1万円になりました。この場合もさきほどではありませんが、圧倒的に買い手有利です。外れても元金がそのまま返って来る上にあたれば2万円もプラスになるからです。依然として買い手が多くまだまだ入札価格は上がっていきます。

    さて、入札価格が1万6千円まで上昇しました。このあたりから買いたいと思う人が少なくなってくるでしょう。なぜならアタリの時の利益が1万4千円まで限られてきた上に、ハズレの時の損失も6千円まで大きくなってきたからです。しかし確率が半々であることを考えると、まだ有利な賭けであることには変わりないと考える人がいたため、値段がさらに上がっていきました。

    とうとう入札価格が1万8千円になりました。この段階でこれ以上の価格で入札する人はあらわれずこの価格で最終的に取引が成立しました。

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    さて、この1万8千円はどういうメカニズムで決定されたのでしょうか?また、この金額の妥当性を数式(モデル)で表すことができるでしょうか?

    効用のモデル化

    そこで少し真面目に定式化してみたいと思います。

    市場にはさまざまな参加者がいるため、個々の効用関数を一律に決定することはたしかに不可能です。しかし均衡価格がわかればそれを参照点として、平均的な効用関数をモデル化することはできそうです。

    確かに均衡価格よりも高い価格で買ってもよいと思う人や、逆に安い価格で売っても良いと思う人も中には存在するかもしれませんが、いずれにせよ双方の力が拮抗するポイントで落ち着きます。そこで、「均衡状態で物事を考えればざっくりOK」という発想でオークションの参加者が全員同じ効用関数U(x)=xU(x)=\sqrt{x}U(x)=x​を持っているxxx万円の賞金を得る時の効用=うれしさをU(x)U(x)U(x)と表すとx\sqrt{x}x​: xxxの平方根、という関係が成り立つ)と仮定してみます。

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    例えば賞金4万円のうれしさは、x=4x=4x=4とすれば、U(x)=4=2U(x)=\sqrt{4}=2U(x)=4​=2ということになります。雑な仮定ですが、実はそれほど的外れではありません。賞金xxxが大きくなればなるほどうれしさU(x)U(x)U(x)は大きくなりますし、上に凸の形状ですので、前回の話の通り、確実に賞金がもらえる方が選好される=リスク回避的であるという条件も満たしています。

    さて、このくじの期待効用(効用、すなわち「うれしさ」の期待値)を計算します。アタリが出て3万円をもらう場合U(3)U(3)U(3)の効用を得られ、ハズレが出て1万円をもらう場合U(1)U(1)U(1)の効用を得られますので、その期待値は

    U(3)+U(1)2=3+12≃ 1.3661\frac{U(3) + U(1)}{2} = \frac{\sqrt{3} + \sqrt{1}}{2} \simeq  1.36612U(3)+U(1)​=23​+1​​≃ 1.3661

    となります。したがって、このくじを引くことそのものが1.3661の効用(うれしさ)を持つと言えます。では、この1.3661という効用は賞金の額(円)で考えると、いくらに相当するものでしょうか?言い換えるとこの効用は何円の価値があるのでしょうか。

    そこでU(x)=1.3661U(x)=1.3661U(x)=1.3661となるxxxを求めると、

    U(x)=x=1.3661⇔x=1.36612=1.8661(万円)\begin{aligned}U(x) = \sqrt x = 1.3661\\\Leftrightarrow x = 1.3661^2 = 1.8661(万円)\end{aligned}U(x)=x​=1.3661⇔x=1.36612=1.8661(万円)​

    となります。

    したがって、このくじは、賞金18,661円を確率100%でもらうことと同じ価値・効用を持つということになります(落札価格の18,000円よりも少し高い値段になりました。このあたりは利得と損失でリスク選好が異なるというプロスペクト理論も関わってきますが、ここでは一旦おいておきます。) 。

    賞金の期待値としては20,000円となるくじですが、効用(うれしさ)の期待値では18,661円と等価になることがおわかりいただけたでしょうか。このくじは発生の確率(1/2ずつ)に基づいて計算すれば20,000円の価値があるはずなのに、アタリとハズレがあって結果が不確実であり、そのことが好まれないために、くじの値段は18,661円と20,000円よりも低く評価されているのです。不確実性のあるくじと等価な効用をもつという意味で、この値段は確実性等価と呼ばれています。

    そして、賞金の期待値である20,000円と確実性等価の18,661円の差額である1,339円をリスク・プレミアムと呼びます。

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    くじを引くことの不確実性(リスク)を引き受ける代わりに1,339円を報酬(プレミアム)としてもらうことが釣り合うという感覚がおわかりいただけたでしょうか。「不確実な賞金よりも確実な賞金の方がうれしい」、「賞金の不確実なくじは、理論上もらえそうな金額よりも少し割安なら買っても良いと考えられている」、という点は当たり前のことのようにも思われますが、その理論的根拠を明らかにし、どの程度割安なら妥当と言えるのか数字で示すことを可能にした点が、前回からご説明している「期待効用仮説」の優れている点です。

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    リスク・プレミアムとは不確実性(リスク)を引き受ける代わりに得る報酬(プレミアム)のこと

    リスク・プレミアムが存在するためには?

    リスク・プレミアム=期待値−確実性等価リスク・プレミアム = 期待値 - 確実性等価リスク・プレミアム=期待値−確実性等価

    ですので、リスク・プレミアムがプラスになるためには、期待値 > 確実性等価 になっている必要があります。そして、そのためには効用関数が今回の例のように上に凸になっていることが条件です。(カーブ状ではなく直線の効用関数であれば、期待値 = 確実性等価となりリスク・プレミアムはもちろんゼロです。)

    すなわち、市場参加者がおおむねリスク回避的であるのであれば、リスク・プレミアムは存在すると言えます。

    このリスク回避的な参加者のおかげで、リスクを取ることが正当に報われるというところがポイントです。他の誰かに勝ったり、誰かを搾取したりする必要はないのです。このことは、よく農作物の収穫(harvesting)にたとえて、リスク・プレミア・ハーベスティング(risk premia harvesting)などと呼ばれます。

    農業には天候不順や災害による短期的な損失はつきものです。投資も同様に長期的視点で気長に続けることが重要だと言えるのではないでしょうか。

    執筆者

    山口 雅史、CMA

    代表取締役 最高投資責任者

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